海洋ゴミの回収に人生を捧げるハタチの青年

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【プラスチックの時代】

レジ袋が有料化された。この間までタダでもらえていたレジ袋にお金を払わなくてはいけなくなった。一枚せいぜい5円程度だが、毎日のように何かしら買い物をする我々にとって、これは単なる金額の問題ではない。

スーパーやコンビニに行くたびに、「レジ袋は要りますか?」と聞かれるのは煩わしい。エコバッグを忘れ、買ったお弁当やペットボトルのお茶を両手に抱えて歩くのも見栄えのよいものではない。レジ袋の有料化以降、買い物における煩雑さやストレスが増えたのは間違いない。「前のほうがよかった」と思う方も少なくないだろう。

私たちの生活にはプラスチックがあふれている。

「かつて石器時代や青銅器時代があったように、いまはプラスチック時代だ」

 そう語るのは、若干20歳のオランダ人青年ボヤン・スラット。大学生の彼にとって、卒業することよりも重要なことがある。

それは、「海をきれいにすること」だ。

 

【環境問題は誰の問題か】

 これまで成功しなかったからと言って、これからも成功することはないと言いきることは誰にもできない。SNSで仲間を募り、クラウドファンディングで資金を調達するボヤンは、新しい時代の活動家だ。

彼と仲間たちはたった8日で200トンもの海洋ゴミを集め、ロッテルダムにある最新のリサイクル工場で新しい製品に作り替えている。しかし、太平洋北部だけでまだ推定15万トンものプラスチックが眠っているという。

「環境問題は次世代の問題ではなく、僕たちの問題だ」

 その言葉どおり、ボヤンはどうすれば海洋ゴミをより少ない労力と費用で回収できるかを真剣に考えている。

 

【一番の問題はモノの価値に気づかないこと】

 動画の最後にボヤンが口にする言葉にハッとした。

「プラスチック製品は長く使えるものでなければ意味がない。けれど、今はそのほとんどがゴミになっている。モノの価値に気づかずに捨ててしまうのが、一番の問題だ」

 プラスチックが悪なのではない。「長く使える製品」のはずのプラスチックを簡単に使い捨て、「長く残るゴミ」にしてしまっている私たちの意識が問題なのだ。

 日本で排出される廃プラスチックのうち、レジ袋が占める割合は2%に過ぎない。我々がお弁当を袋に入れずに持ち帰ったところで、ボヤンの仕事を減らすことにはほとんど貢献しないだろう。

しかし、これまでタダだったレジ袋にお金を払うようになり、我々は気づいたはずだ。レジ袋には価値がある、と。「前のほうがよかった」と嘆く前に、一度立ち止まって考えたい。

 

 

ライター:Nico

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